フランス語の能力はほぼゼロに等しい状態で、語学学校でフランス語を勉強しはじめました。
入学のときの面接で「金曜日」というフランス語がでてこなくて、苦し紛れに「Freitag...」と第二外国語で覚えていたドイツ語で答えて、先生から苦笑されました。
そんなスタートを切った私でしたが、「フランス語をフランス語で学ぶ」という形で相性もよかったようで、私のフランス語は比較的早く上達しました。
そのなかでどうしても解せなかったけど、解すしかないと思ったことがありました。
それが、
«Parce que c'est plus joli, non ?» (「だってそっちのほうが美しいでしょ?」)
という"文法"です。
授業中分からないところは何度も質問し、先生はすべてに丁寧に答えてくれます。でも解答の中に、この言葉がちょいちょい登場するのです。
たとえば、
「どうしてこの単語は女性名詞なの?」といったような質問をするとこのような答えが返ってくるのです。
«Parce que c'est plus joli, non ?»
「だって、そっちのほうが響きが美しいでしょ。」
「だって、そっちのほうが全体の流れが美しいでしょ。」
と先生は言うのです。
生徒はというと、
「いや、わかんないから、その感覚。苦笑」
まずはここから始まり、
でも、何度もそう答えられると、
「うー、うん...。だよね、まあそうかもね。」
「はい、きたー、またきたー。オッケーオッケー。」
と、慣れてきます。
段々と「フランス語ってそんなもんなんだな」と素直に受け入れるようになっていました。
この感覚で進めちゃうのは、やっぱりフランス語独特なんですかね。英語やドイツ語を学んでいるときには、同じような質問をしてもそういう答えは返ってこなかったから。
私はこの先生とのやり取りで気がついたことがあって、それは「いつの間にか私にもその感覚が染み込んでいた」ということです。
なんだかんだ言いながら、幾度となく聞いた «Parce que c'est plus joli, non ?»の感覚を使って、お初耳なフランス語が女性名詞なのか男性名詞なのかを判断していたのです。
「どっちのほうがより単語や文が美しく聞こえるのか」
男性/女性名詞を区別するコツはあるのですが、それにあてはまらない場合はけっこうこの感覚にたよっていました。
しかも結構当たってるんですよね、これが。
もしかしたら、そんな教え方をしていたのは、私の先生たちだけだったかもしれません。もしかしたら、ただ説明するのが面倒だったのかもしれません。w
でも今思えば私にとっては、フランス語ネイティブの感覚を染み込ませていた時間でもあったんだなぁと思いました。
良い方に転んでよかったなぁ、と。w
そのフランス語ネイティヴの「感覚」とか「美学」とか「"これがフランス語よ"みたいなプライド」みたいなものに触れた貴重な時間だったのかなと思いました。